SRX600インジェクション始動

SP-TDC
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おひさしぶりです Tochinです。
今回はSRX600(キック式)のインジェクション化です。

オーナーさんが奥様との思い出の場所を巡るために購入された車体だそうです。
純正CDIユニットが壊れていて動かない状態で、さらに安心して乗れるようにしたいから
できればインジェクション化したいとのことでした。

今回はSP-TDCユニットだけじゃなく、車体まるごとお任せいただけるとのことでしたので
ありがたく、はりきって作業させていただきました。

車体まるごとなら、やりたかったことが山ほどある。
そのすべてをやらせていただきました。
なので、お時間は1年以上かかってしまいました(^^ゞ
その間、オーナーさんには温かくお待ちいただき、スタッフ一同感謝しております。

さて、SRXのインジェクション化といっても様々な手法があると思いますが
やりたかったのは、もしヤマハがSRXインジェクションを出していたらこうだったんじゃないか?!
ということです。

大きく出たな とか 構想だけだろ とか言われそうなのは目に見えて明らかな無謀な挑戦ですね(^^)
なので、せめて始動してから公表しようと思って温めておきました。

まずはもと車体。

車体をじっくり見るのは初めてです。
さすがヤマハですね、このコンパクトさ!
設計思想がうかがえる作りしてます。

これがSRXのインジェクション化の最難関で、見事にどこにもスペースがありません。
これを後付け感なく純正に見えるように仕上げたいと思います。

まずスロットルボディをどうするか。
SRXは単気筒だけど吸気ポートがふたつあってキャブも二個。
片方のキャブが高回転用で、もう片方が低回転用、口径もそれぞれ違うという複雑なキャブがついてます。
でもエンジンのインテークポートの口径はふたつとも同じ。
よくあるシングルスロットルボディじゃなく、これを活かして二連のスロットルボディにします。
あと、ファンネルやパワーフィルターにせず、エアクリもそのまま使います。

で、まず作ったのがピッチ&角度変換インマニ。
どうっすか、美しくないですか(^^)

で、スロットルボディはNINJA250用。

SRXのインテークポートより2mmほど大きい口径で、大きすぎず小さすぎず、ちょうどいい感じです。

それをこんな感じでフィッティング。

エアクリとの接続は市販のシリコンホースを使いました。
車のエアクリとかターボの接続に使うやつです。

で、スロットルボディを付けると・・・

ぴったり収まりました。

といってもNINJA250のスロットルボディがそのまま使えるわけもなく
スロットルリンク部分は全てワンオフ制作しました。

それから これ。

まんなかにそそり立ってる支柱。
NINJA250のスロットルボディにはアイドルコントロールバルブが付いてるんだけど
それは撤去して、かわりにノーマルのチョークバルブを付けられるようにしました。
なんで電子制御のアイドルスピードコントロールをわざわざ手動にするのか。
単気筒のSRXがそこまで電子制御じゃつまんないし、ハンドルに付いてるチョークレバーが機能しなくなるのも
なんかカッコ悪いじゃないですか。
なのでチョークレバーをアイドルアップレバーとして活かしてみました。

ここまでこだわって作っても、外から見えるのはフレーム下にちょっと見えるこれだけす(笑

たぶん言わなきゃキャブじゃないなんてわからない。
フレームとのクリアランスにも気をつかって1.5mm程度に仕上げました。
なのでほとんど違和感はないと思います。

次の大物は燃料ポンプ。
これが見えちゃったらインジェクションってわかるけど、だっさ ってなりますよね。
さんざん考えてここにしました。

エアクリボックスの下の方に埋め込みました。
燃ポンをとりつけたままでもエアクリを脱着でき、かつ、エアクリを外さなくても燃ポンだけでも外せる
というミリ単位のクリアランスにしてあります。

あとは燃料フィルターと燃圧レギュレーター。
これもエアクリ内に埋め込もうかとも思いましたが、メンテナンス性が悪いので
これだけは車体左側の外から見える位置です。
見える位置だから、各部の角度を合わせて純正っぽく。

燃圧計が出っ張ってるけど、これはセッティングが出来たら外します。

そしてメインのSP-TDCユニット。

ノーマルCDIユニットと同じ位置にしました。

ヤマハの完成されたデザインにこれだけのパーツを違和感なく溶け込ませるのは本当に大変でした。
でも結局、車体側で加工したのはエアクリボックスのみ。
穴を開けたり、干渉するからって削ったりは一切していません。
全て取り付けるパーツ側で調整しました。

もう一度同じものを作れるように、全てのパーツは図面をおこしてから製作しました。
万一壊れても直せるように、流用したパーツも全て現在入手可能なものを使ってます。

さて、ここから実際に始動しての調整です。
まったく新しいものなので、参考になるセッティングなんてなく、すべて手探りです。
なので、最初は燃調が合わず強烈なケッチンを何度もくらいました(^^ゞ
体ごと50センチくらい吹っ飛ばされるケッチンで、骨折こそしませんでしたが
足の裏を鉄パイプで殴られるような(笑
打撲でキックできなくなったりもしました。

自分でケッチンを体感できたから、ここはもう少しこう、これはこうしたらと
SP-TDCのプログラムを最適化して、今ではほとんどケッチンは起きなくなってます。
起きてもボフッと少し足に感じるくらい。

全部語ったら本になっちゃうくらい困難の連続でしたが、どこも妥協せず
思ったように仕上げられたと思います。
ここまで文句も言わず待ってくれたオーナーさんには本当に感謝です。

では、SRX600インジェクション、初キック始動の動画です。

セッティングはまだまだこれからですが、どうです?! 安定してるでしょ(^^)
こだわりのアイドルアップもしっかり効いてます。
このままセッティングをつめたいところですが、新潟は冬本番に入ってしまったようです。
残念ながらここまででタイムアップ。

自分たちのことではありますが、よくここまで妥協せずやってこれたと思います。
始動したときにはスタッフ一同 涙が出ました。

ですが文字通りスタートをきったばかり。
奥様との思い出の場所を安心して巡れるように、ここからしっかりセッティングしていきます。
もうしばらくお待ちくださいませ。

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